新しい旅 ハリイ サクラ

 

同じ朝のはずなのに

いつもの朝とは思わない

水面に映る白光が微かに違う

鳥の唄の響きが僅かに違う

理由は分かっているけれど

本当は分かりたくなんかない

 

同じ昼下がりのはずなのに

いつもの昼下がりではない

空から降り注ぐ光の波や

頬を撫でる透明な手のぬくもりは

あの時と似ているようで

本当は違うものだと気づくのだろう

 

同じ夜のはずなのに

いつもの夜とは呼べない

闇を切り裂くような小さな白点から

青白い円が醸し出す静寂まで

それらが作り出す世界は

あの時とは違うものだ

 

あの時踏み出した一歩と

今踏み出した一歩が

もしも同じであるならば

私の旅は始まっていない

 

思わず溢れ出した色とりどりの思いと

堪え切れずに零れた雫を

私は手のひらで集めて

小さなガラスの小瓶に詰めていく

 

そうして

新しい旅が

始まる