モラトリアムと本

 このページではモラトリアム部員が独断と偏見で選んだおすすめの本を部員の一言と一緒に紹介していきます。と、言いつつだんだんと一言ではなくなってきていますね……。読む本に迷った時などにどうぞ。


・「駆け込み訴え」太宰治 

 トプ画に拝借しました。部長の大のお気に入り。みじめな男の歪んだ愛慕が描かれている。題の通りしがみついて喚き散らすような陰気な文章が続くが、その実純粋すぎて憎むことができない。

・「蝶々の纏足」山田詠美

 少女が少女でなくなるまでの短い時間がそっと冷静に描き出されている。少女たちのほろ苦い小さな箱庭を覗き見ることができる。

・「新釈 走れメロス」森見登美彦

 ごめんなさい太宰を引っ張っているわけではないんです。ただ面白いから仕方がないんです。山月記や桜の森の満開の下なども収録されていますが、笑いたいときにはメロスを読んでください。百物語が気に入った方には同一著者による「きつねのはなし」をおすすめします。

・「"文学少女"シリーズ」野村美月 

 ラノベから一冊。本が苦手な人におすすめ。可愛らしい"文学少女"な先輩と一緒に周囲で起こる事件を解いていく。分類は青春ミステリーに入るが、キャラクター小説の側面はラノベなのでもちろん強い。かと言ってそこまで都合の良い世界になっているわけでもない。遠子先輩があまりにも楽しそうなので、文学の世界を覗いてみたくなる。

・「本屋さんのダイアナ」柚木麻子←new!

 最近ドラマ化された「伊藤くんA to E」の著者による青春小説。ギャルの母を持つダイアナと、シックなものに囲まれて育てられた彩子。二人は本をきっかけに、お互いに憧れを抱きつつ友情を深めていく。しかし少しの事件で二人は突然別れることになり、それぞれ全く別の道を進んでいくことになる。物語として読者の求める最低限のファンタジーを描き出しつつも、人生に対する期待と失望がリアリティを持って存在している。