書評 「女の子は、明日も。」 飛鳥井千砂著

◎あらすじ 
 元高校の同級生であった、満里子、悠希、仁美そして理央の四人は、理央が翻訳家として雑誌に掲載されたことを機に再開することとなった。お互いに順風満帆のように見える四人であったが、それぞれ人には言えない悩みを抱えている。それに向き合いながらお互いを羨みそして妬みあう女同士の決してきれいとは言えないどこかほの暗い友情を描いた作品である

 私はこの作品を読んで、女同士の友情はもろく儚くもあるが醜いだけではない何かを感じとった。それは彼女たちがもう成人して何年もたった一人の大人の女性となっているからかもしれない。嫉妬、優越感などが渦巻く中でそれを悟られないよう丁寧に包んでしまえる彼女たちからはお互いに対する気遣いが感じられた。女の友情というものも悪くないのではないかすべてが綺麗ごとで語られるわけではないがそう不思議と思えてしまう何かがこの四人の女性たちの間にはあるのだ。
 “大人の女性”という言葉を書いていたが、その実彼女たちは心の中にまだ“少女”を買っているように思える。美しさに対する羨望や要領よく何でもこなす仕事の後輩に対する嫉妬など、それによって声をあげて泣いてしまったりするところは幼い女の子のようであった。しかしその幼さがより満里子、悠希、仁美、理央の四人をよりリアルなものにしている。
 高校では生徒会も務めた悠希や引っ込み思案の仁美、大人びた雰囲気でクラスから浮いていた満里子、帰国子女で人目を引いた理央というあまり仲が良かったわけでもない共通点のなさそうな四人であったが、現在は全員が既婚者となっている。満里子は職場での略奪婚、悠希は酔った勢いから始まった結婚、仁美は婚活パーティーで知り合った相手と、理央は大学の友人と、とこれもまた様々だ。結婚を終えた彼女たちは子供を作るかどうかを話題に挙げていた。そこで仁美は不妊治療に励んでおり、ほかの三人は特に今はほしいと思っていないと答えている。そこで書かれているそれぞれの妊娠に対する考え方、理央は子供が苦手と言っておりそこで仁美は「結婚してそして妊娠する。これが普通にみんなが認める幸せだと思っていた」と感じている。お互いの幸せとは何か考えながらそしてそれ全てを腹の中に抱えたまま今の生活からもう少し幸せになろうとする彼女たちがどこか愛おしくなる、そんな小説だった。