「君の膵臓をたべたい」の魅力 めろきち

 

 『君の膵臓を食べたい』について

 

 一人で本を読んでばかりいて目立たない主人公【地味なクラスメイト】の僕が、膵臓の病気によって余命幾ばくも無いクラスメイト、山内桜良の日記「共病文庫」を読んでしまったことから動き出すストーリー。著者は住野よる、2016年本屋大賞第二位受賞作品。主人公とヒロインのテンポの良い会話は読んでいて面白く、お互いを「自分とは反対側にいる人間」と意識し羨ましく思いながら、恋人や友達とは違う、お互いを必要としあう二人の関係は、純粋にいいなと思った。

 特に印象的だったのは、余命少ないのに図書委員の仕事に時間を費やしていいのかと聞かれた桜良が

 

『私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ。一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。私は今日楽しかったよ』

 

と語るところ。普段、「明日死ぬかもしれない」って考えている人ってどれくらいいるんだろう?もしかしたら事故や事件、病気で明日死ぬかもしれない、それは誰にでも当てはまることで、考えてみれば当然のこと。でも、明日があるのが当たり前であるかのように日常を過ごす人はたくさんいて、私もその一人だけど、明日死ぬかもしれないからって、今日特別なことをするんじゃなくて、いつも通りの日常を過ごすのがいいんだろうななんて、普段は考えないようなことを考えさせてくれた。

 そしてもう一つ、生きるというのはどういうことかと聞いた僕に対する桜良の答え。

 

『生きるってのはね、きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ』

 

 残された人生を周りの人と心を通わせながら過ごし、遺されてしまう人たちにもつながりを築こうとする彼女の生き方は、素晴らしいと思った。彼女みたいに強く生きていけたらいいのになって思う。

 著者の処女作ということもあってか、「ん?」と思う部分はいくつかあるけれど、少々猟奇的なこのタイトルが物語全体をふわっと包み込んでいるような、あたたかいお話です。読書慣れしたベテランの方よりも、中高生や、普段活字ばかりの本を読まない人にとって読みやすい文体で、是非読んでほしい一冊です。

                      『君の膵臓を食べたい』[著]住野よる